ユニセフ講演会の報告

平山陽洋

(世界教養学部専任講師、グローバル共生社会研究所上席研究員)

UNICEF(国連児童基金)東京事務所代表 ロベルト・ベネス氏

 2023年度1期が終わりを迎える前の7月12日(水)の夜に、第4回RINGSイブニングセミナーとして、「世界の子どもたち~UNICEFの活動と就業機会~」が開催されました。このイベントでは、UNICEF(国連児童基金)東京事務所代表ロベルト・ベネス氏がご講演くださいました。本学学生、教職員に加え、後援いただいた日進市の市民の皆様がご参加くださり、参加者の数は、会場参加、オンライン参加をあわせて100名を超えました。

  ベネス氏は、ご講演のなかで、「子どもの権利条約」を指針としたUNICEFの活動と、150の国々に事務所を設置した組織全体像を簡潔に紹介のうえ、新型コロナウイルス感染症の流行が世界の子どもたちの生活に与えた影響についてお話くださいました。教育機会の喪失、通常であれば受けることができたはずの各種予防接種の機会の喪失、子どもの虐待の増加など、その影響は多岐にわたります。また、感染症の流行は落ち着いてきたとはいえ、ウクライナやスーダンで戦争が起こり、感染症流行や戦争の影響で食糧や燃料の価格が上昇するなど、世界は混迷の度を深めています。しかし、混迷するからこそ、子どもの権利を守ることの大事さも際立っているのが今日の世界です。危機的状況をきっかけに、子どもたちにとってよりよい世界をつくる必要性をベネス氏は強調します。

アジア保健研修所(AHI)事務局長 林かぐみ氏

  ベネス氏のご講演のあとには、まず、アジア保健研修所(AHI)事務局長の林かぐみ氏がコメントくださいました。コメントのなかで指摘されたのは、子どもたち自身が声をあげ、積極的に社会形成にかかわることの重要性、とくに、グローバル、ナショナルというレベルの下のローカルなレベルでの住民参画へのかかわりの重要性です。林氏からのコメントに対して、ベネス氏は、子どもを支援の対象者、客体として扱う旧来型のアプローチから、積極的に自分たちの声をあげる主体と考えるアプローチへの転換が必要と論じ、子どもたちの社会形成への参加を伴いつつ「地域社会の力を高める」ことが、「持続可能な開発」というアジェンダでも重視されていると述べられました。

 その後の質疑応答の時間では、会場参加者、オンライン参加者から多くの質問が寄せられ、それぞれの質問に対し、ベネス氏が丁寧に応答くださいました。先進国と途上国の構造的格差の問題や、先進国内での相対的貧困の問題、多極化する世界構造のもとでの支援のあり方などが議論されました。

 講演開始前のプレイベントでは、林かぐみ氏が、途上国におけるコミュニティ形成を支援するAHIの活動を紹介くださいました。新型コロナウイルスのワクチンなども、単に機械的に配布するだけでは途上国での接種は広がらず、ローカルな人びとの声を聞き、それら人びとの思いを尊重するかたちで形成されたコミュニティが存在することが、接種が広がるうえでの重要な条件です。AHIは、そうしたコミュニティの形成にかかわるヘルスケアワーカーの活動を支援しており、インド、ネパール、バングラデシュといった地域で活動するヘルスケアワーカーの貴重な声が紹介されました。

 ご講演者のUNICEFロベルト・ベネス氏、コメンテーターを務めるとともにプレイベントを実施くださったAHI林かぐみ氏、講演を後援くださった日進市、そして、ご参加いただいた市民の皆様、教職員、学生の皆様に、心から、お礼申し上げます。

 講演会の模様は、2023年7月15日の中日新聞朝刊なごや東版で紹介されました。取材くださった平木友見子記者にも、心から、お礼申し上げます。

なお、当日の講演会の模様は、YouTubeのつぎのURLから視聴できます。音量が少し小さいため、音量をあげてご視聴ください。若干ノイズが入っている点は、どうか、ご勘弁ください。
https://youtube.com/live/wN3wvX189BM