RINGSイブニングセミナー(第2回) 「ムスリム住民との『つながり』を通して多文化共生を考える」を開催しました。

高瀬 淳一名古屋外国語大学RINGS所長/世界共生学部教授)

基調講演:大橋充人さま

 2022年1月14日,名古屋駅近くの「ノリタケの森」に新しく誕生した名古屋外国語大学・名古屋駅キャンパスにて,名古屋外国語大学グローバル共生社会研究所(RINGS)の第2回イブニングセミナーが開催されました。今回のセミナーは,地域住民の皆さまにもご参加いただき,多文化共生について理解を深めるとともに,問題解決に向けた意見交換を行うことを目的に掲げ,愛知県の後援もいただきました。

 ゲストにお招きしたのは,愛知県の多文化共生の実情と政策に大変詳しい大橋充人さま(愛知県立大学客員共同研究員・多文化共生マネージャー)です。近著の『在日ムスリムの声を聴く−本当に必要な“配慮”とは何か−』 (2021年 晃洋書房) では,多くのインタビューをもとに,ムスリム住民が日本で生活するうえでの多様な課題を指摘されています。

 基調講演では,在日ムスリム人口や在留資格についての説明のあと,ご著書でも取り上げられた「在日ムスリム住民の声」をご紹介いただきました。日本人の側の理解不足だけでなく,過剰な配慮がかえって日本での生活上の不便につながっているケース(修学旅行で神社に行くので不参加とみなされた,など)があるとのお話がありました。

 また,在日ムスリム住民が日本社会に対する肯定感を持っている点を強調され,外国人ムスリムとの「つながり」について提言されました。ムスリムの方々からの日本社会とのつながりの形成については,すでにPTAや自治会に参加するムスリム住民が増えていることを指摘され,地域社会とのユニークな関わり方としてハラールパン屋さんの例もご紹介されました。

クレシ明留さん

 討論者には,ヤングムスリムの会(SYM名古屋モスク)から慶應義塾大学総合政策学部2年のクレシ明留さんにご参加いただきました。クレシさんは,YouTubeで「ヤングむすりむチャンネル」を放送するなど,新しいツールを通じて日本社会との架け橋を築こうとしています。厳しい言葉を投げかけられる経験もあるが,SNSや大学生との交流会などを通じて心の平和を大事に生活していることを知ってもらう活動を続けている,とのお話でした。

 その後,会場ならびにオンラインでご参加の皆さまとの質疑応答が行われました。

 コロナ禍のため,オンラインでの参加者が多く,活発な討論や交流が十分できなかったのは心残りですが, 在日ムスリム住民のかかえるライフサイクル上の課題について新たな展望が得られた点で,大変に意義のあるセミナーとなりました。